車を所有していたご家族が亡くなられ、
必要が無くなった。その車を売却しようとする。
そしてふとあることに気が付きます。
「所有者が亡くなった車の名義変更はどうすればいいのか?」
通常の車は、本人の意思確認のために、
印鑑証明とその実印を押印した委任状と譲渡証があれば、簡単に手続きが終わります。
しかし、所有者が亡くなられてしまうと、その意思確認ができません。
結論を言えば、所有者が亡くなれた場合、車は遺産相続の対象になります。
そのため、相続の手続きが必要となります。
そこで、今回は車の相続に必要な書類について、様々なケースごとに分け、詳しく調べました。
【ケース1】相続人が2人以上いる場合
最も一般的なケースです。
遺言状が無い場合、亡くなった人の妻や夫などの配偶者と子ども(家族)などは自動的に相続人(正式には法定相続人といいます。ここでは相続人とします)となります。
以下、このように相続人が2人以上いる場合の必要書類です。
- ① 車検証の所有者の死亡の記載がされている書類。戸籍謄本または除籍謄本、住民票の除票など
- ② 相続人全員の名前が記載されている書類。戸籍謄本または除籍謄本(※場合によって、原戸籍謄本等が必要になります)
- ③ 遺産分割協議書(相続人全員の実印が押印されているもの)
- ④ 相続人の代表者の印鑑証明書
- ⑤(業者等に売却する場合のみ)委任状・譲渡証(相続人の代表者の実印が押印されたもの)
- ⑥ 車検証
以下それぞれの必要書類について解説していきます。
①車検証の所有者の死亡の記載がされている書類について
こちらは、車の所有者が亡くなり、相続が発生することを証明する書類です。
必要な書類は以下のいずれかの書類となります。
- 戸籍謄本
- 除籍謄本
- 住民票の除票
なぜ、3種類の書類を挙げているかというと、いずれの書類も、
「これさえ所得すれば、死亡の事実が証明される」という書類が無いからです。
戸籍謄本についても、除籍謄本についても、住民票の除票においても、必ずしも死亡の事実が載っているとは限りません。
そのため、上記3つの書類の中で、「死亡の事実が記載されている」書類を取得する必要があります。
②相続人全員の名前が記載されている書類。
相続人が誰であるかを示す書類となります。
これは戸籍謄本となります。
しかし、次の場合、戸籍謄本に加えて、別の書類を添付しなければなりません。
- 相続人の中に、婚姻等で苗字が変わった人がいる場合・・・苗字が変わった事を証明できる書類(原戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票等)
- 相続人の中に相続を放棄する人がいる場合・・・相続放棄申述書
③遺産分割協議書
②で相続人が誰であるかが証明されます。しかし、車は分割することができませんので、相続人の中で、誰の名義にするかをきめなければいけません。そこで、相続人全員が協議した上で、「実際に車が誰の名義になるのか、その代表者を相続人全員で協議して決めました」という事を証明する書類が必要になります。
それが、遺産分割協議書という書類になります。
ネット上にひな形がありますので、必要な方は下記のPDFを印刷して使用してください。
- 遺産分割協議書 ひな形
いずれにしても、全員が協議し、納得の上相続人が決まったという事を示すために、全員の実印の押印が必要です。
しかし、現実には、相続人の代表者以外は、印鑑証明書が不要のため、仮に実印でなくても、運輸局側は確かめる事が不可能です。
しかし、シャチハタはダメでしょうね。
④相続人の代表者の印鑑証明
③で、相続人の代表者が決まり、車両はその人の名義に変わります。
そこで、相続人の代表者の本人確認と住所の証明のために、その相続人の代表者の印鑑証明書の原本が必要となります。
⑤(業者等、他社に売却する場合のみ)委任状・譲渡証
④までで、所有者の死亡した車両は、一旦相続人の代表者の名義に変わります。
しかし、その車をそのまま売却するケースが多いので、追記しておきます。
この場合、名義の変わった車を、さらに他社の名義にするための書類が必要となります。
具体的には、下記の2枚の書類が必要となります。
- 委任状
- 譲渡証明書
いずれの書類も、相続人の代表者の実印の押印が必要となります。
これが最も一般的な、所有者が死亡した車の名義変更の必要書類となります。
⑥ 車検証
当然ながら、車検証も必要となります。
【ケース2】査定価格が100万円以下の場合で簡易な手続きを取る場合
【ケース1】を見ていただければ分かるように、所有者が死亡した場合の名義変更は、手続きが非常に複雑です。
例えば遺産分割協議書においても、全員の実印が必要であるなど、非常に手間がかかります。
しかし、相続する車両が、100万円以下の場合は少しだけ手続きと集める書類を簡易にすることができます。
この場合の必要書類は下記のものになります。
- ①亡くなった方の死亡の記載がされている書類。戸籍謄本または除籍謄本、住民票の除票など
- ②相続人の代表者が相続人であることを証明できる書類。戸籍謄本等
- ③遺産分割協成立申立書(相続人の代表者の実印が押印されているもの)
- ④相続人の代表者の印鑑証明書
- ⑤査定額が100万円以下であることを証明する書類。査定書等
- ⑥査定を査定士の資格を有するものが行った事を証明する書類。査定士証のコピー等
- ⑦(業者等に売却する場合のみ)委任状・譲渡証(相続人の代表者の実印が押印されたもの)
- ⑧車検証
「必要書類が増えてるじゃん」という声が聞こえてきそうですが、⑤⑥は業者に依頼して作ってもらうものなので、赤字の①~④と⑦⑧の準備をすればいいという事になります。
以下、それぞれについて、より具体的に解説していきます。
①車検証の所有者の死亡の記載がされている書類について
これは、上記【ケース1】と同様のため、説明を省略します。
②相続人の代表者が相続人であることを証明できる書類。
【ケース1】とほぼ、同様で、戸籍謄本等で、相続人であることを示します。
しかし、この簡易な手続きの場合、相続人の代表者の名前さえあればそれでいいという事になります。
仮に、戸籍謄本に、車検証の所有者の死亡の記載があり、相続人の代表者の名前があるのであれば、その他の役所で取得する書類は、相続人の代表者の印鑑証明のみとなります。
この部分でも、少し負担が減りますね。
もちろん、相続人の代表者の苗字が変わっている場合は、その苗字が変わったことを証明する書類(原戸籍謄本等)は必要です。
③遺産分割協議成立申立書
100万円以下の場合、遺産分割協議書の代わりに、遺産分割協議申立書を使用することで、手続きが少し簡略化できます。
遺産分割協議申立書のひな形は下記のリンクです。
http://www.office-inouei.com/car/isanbunkatsu_002.pdf
遺産分割協議書と比べ、遺産分割協議申立書がどう簡略化されているかというと、
相続人の代表者以外の印鑑が不要になるという点ですね。もちろん、他の相続人の方に無断で相続してはいけませんが、書面での証明は不要になるという事です。
④相続人の代表者の印鑑証明
これも【ケース1】と同様です。
⑤査定額が100万円以下であることを証明する書類
100万円以下であれば、簡易な手続きができるのであれば、ウソをついて「この車の価値は100万円以下だ」と言えば、どんな車も簡易な手続きで済ませる事が出来そうです。
運輸局としては、そのようなウソを防がなければいけません。
そのため、査定士の資格を有するものが実際に、その車の価値を査定し、「実際に100万円以下という査定が出た」事を証明する書類の提出が必要となります。
具体的には
- 査定書
が必要となります。
査定書自体は、特に決まった様式はありませんが、ネット上にあったので、例としてリンクを張っておきます。↓
査定書の例
もし、相続した車をすぐに売却する場合、売却先に依頼して書いてもらいます。
しかし、基本的に、どの買取店も、査定の段階では査定書を発行しません。売却が決まってから依頼するようにしましょう。
買取店がどうしても査定書を発行しない、または下記の査定士の資格を持っていない場合、
有料にはなりますが、一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)に査定を依頼することも可能です。
⑥査定を査定士の資格を有するものが行った事を証明する書類
⑤の査定証は、様式が無く、査定した人の印鑑等も不要です。そうすると、極端に言えば、自分で勝手に査定して、適当な数字を入れてもバレようがありません。
そのため、「ちゃんと査定士の資格を持っている人に査定してもらった」という事を証明する書類も提出が必要となります。
では、そもそも査定士って誰?? という話になりますが、
ここで言う査定士とは、一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)に認定されている査定士となります。
車の買取をしている一般的な自動車ディーラーや、中古車販売店、買取店であれば、たいてい、社員の内少なくとも1名は持っている資格です。
具体的に必要な書類は、
- 査定士証のコピー
となります。もちろん、これは、⑤の査定書を発行した人の査定士証のコピーという事になりますね。
⑦(第三者に売却する場合のみ)委任状・譲渡証
【ケース1】と同様です。
⑧車検証
車検証は当然必要です。
【ケース3】単独相続の場合(相続人が一人である場合)
配偶者である、車の所有者が死亡し、子どもがいない場合など、相続人が一人のみ場合も、手続きは、【ケース1】に比べかなり簡素になります。
この場合、下記の書類をそろえれば、名義変更が可能となります。
- ① 車検証の所有者の死亡の記載がされている書類。戸籍謄本または除籍謄本、住民票の除票など
- ② 相続人が一人だけであることを証明する書類。戸籍謄本または除籍謄本(※場合によって、原戸籍謄本等が必要になります)
- ③ 相続人の印鑑証明書
- ④(業者等に売却する場合のみ)委任状・譲渡証(相続人の代表者の実印が押印されたもの)
- ⑤ 車検証
【ケース1】のように、相続人の代表者を決める必要がありませんので、遺産分割協議書が必要なくなります。他の必要書類については、【ケース1】と同様ですので、説明は省略します。