ネットで、車の下取りに関する情報を集めようとすると・・・
- 下取りは安いから気をつけろ
- 下取りで絶対売ってはいけない
- 下取りだと20万円損します
- 絶対に買取にしましょう
- 一括査定をしましょう
などという情報ばかりで、どれが本当の情報なのか、全くわかりません。
一方、実際に下取りで車を売る人の割合は、今も昔もそれほど違いはありません。
車を売る人の多くは、相変わらずディーラー等の下取りで車を売却し続けています。
にもかかわらず、実際に下取りで車を手放した人が
「失敗した・・・」
と後悔しているような噂もあまり聞きません。
一体どちらが本当の情報なのでしょうか??
今回は、その謎に迫ります。
適正だけど適正でない??ディーラーの下取り相場のからくりに迫る。
そもそも下取りは本当に適正価格なのか?
あなたは、これまで新車ディーラーで下取りの査定をしてもらったことはありますか?
私の経験を元に話すと、ディーラーは下取りに関して、基本的に誠実です。
「なるべく安く取ってやろう」 という企みは一切感じられません。
営業マンも、新車を販売することに比べると、下取りの話しをする時は非常にリラックスしていませんか?
それもそのはずです。
ディーラーにとって、下取りは、本来
「どうでもいいもの」なのです。
当たり前ですよね? ディーラーの最も重要な役割は
「新車を販売すること」
なのですから。
新車さえ買ってくれれば、下取りがあろうとなかろうと本来どうでもいいわけです。
彼らにとっての下取りの位置づけは
「損さえしなければいい」
程度のものなのです。
そんな彼らは、どうやって、一台一台違う車の下取り価格を決めているのでしょう??
本来、査定のプロとは言えない新車ディーラーが、車の車検証と現物をちょっと見ただけで、
ためらいもなく「ポン」と下取り価格を提示することができる理由は??
実はこの本のおかげです。↓
これは一般財団法人 日本自動車査定協会が毎月発行している、中古車の卸売り価格基準をまとめている、下取りの基準価格となるガイドブックです。
この本の冒頭の”まえがき”には次のように書かれています。
このガイドブックは、消費者と自動車販売業界の方々に、取引の目安となる中古車の価格情報を提供し、参考としていただくためのものです。
参照:YELLOW BOOK (中古車価格ガイドブック) 一般財団法人日本自動車査定協会 発行
この本は、有料ですが、中古車業界の人のみならず、一般の人もお金を払えば手にすることができます。
つまり、一般の人と中古車業界の人達が、健全な取引価格で中古車を売買できるようにするために作られた、
「本来の適正相場を知るための」 ガイドブックなのです。
そして、私の知る以上、ほとんどの新車ディーラーは、きちんとこのガイドブックに基づいて、忠実に淡々と査定をしています。
ほとんどの新車ディーラーは、と言いましたが、まれに、このイエローブックの基準よりも高めに査定をするディーラーもあります。
これは、新車販売のために、値引きの代わりとして、ちょっと本来の基準に色を付ける程度の事であれば、ありうる・・・程度の事です。
いずれにしても、ディーラーはこの査定基準を破って、消費者の足元を見るような安い査定をすることはありません。
だから、ディーラーの下取りはやはり「健全」と言わざるを得ないでしょう。
しつこいですが、彼らの査定はやはり「適正」なのです。
では、下取りが安い安いと言われているのは嘘?都市伝説?
冒頭にかきましたが、ネット上では「下取りは安い!!」
とどのサイトにも書いてあります。
下取りが適正価格なのであれば、これらはすべて嘘?なのでしょうか?
いいえ、これらは嘘ではありません。
下取りは安いです。
適正なのに安い???どういう事??
イエローブックは、一般財団法人です。ディーラーからお金をもらっているわけでもありません。
だから、その基準は適正です。
それを忠実に守っているディーラーの下取りも適正なはず。
でも安いんですよ。
じゃあどれくらい安いの?下取りディーラーの利益とは??
そもそもディーラーは下取りした車をどう処分しているかしっていますか?
実は、ディーラーの場合、ほとんどを業者のオークションで処分(転売)しているのです。
(業者オークションについてはこちらの記事で確認してください。)
さて、ここで・・・ ディーラーは下取りした車一台を業者のオークションで転売することで、
どれくらいの利益を得ているのか気になりませんか?
また、その利益そのものが、彼らがどれくらい安い値段で買っているかを表すものさしともいえます。
仮に、
ディーラーが1万円で下取りした車を、なんの整備もせず別の業者に40万円で転売したとしましょう。
下取り価格の1万円は、安いでしょうか?それとも高いでしょうか?
勿論だれがどう見てもそれは”安い”と言わざるを得ないでしょう。
そんな事を天下の新車ディーラーがするはずがない??
いえいえ、こんな事は日常的にある事なんですよ。
全然珍しい事ではありません。
基本的にイエローブックの査定額は、年式が一年古くなるごとに、5万円~20万円がほとんどは一定の割合で下がっていくように表示されています。
そのため、10年程度走ると、ほとんどの車は査定額の欄が数字ではなく、「 ー 」という記号になります。
ーはつまり車に価値が無いという意味で、つまり基本価格がゼロ円という事になります。
そこから減点していけば、マイナス査定という事もありうるのです。
ですから、1万円という査定金額は、良心的ともいえるでしょう。
この例は、1万円が40万円という、極端な事例ではありますが、
ここまでの差額にならなくとも、0円で下取りされた車が、20~30万円で転売されることなどは日常的にあります。
もっと言えば、下取りが50万円で、150万円で転売、その差100万円の利益など・・・
このような事例も珍しくありません。(業界で言ういわゆる「一本抜き」というやつです。)
実情がわかれば
「詐欺だ!ぼったくりだ!!」
と言われそうですが、
あくまで、ディーラーはガイドブックの適正な価格基準で下取りしています。
なんの問題もありません。
そもそも、ディーラーは、下取りの段階では、オークションの相場を見る事はありません。
実際、それがいくらで売れようと、そこで儲けようという意志は全くないからです。
彼らからすれば、
「適正な価格で下取りしたのに、業者オークションでみんなバカみたいに高い金額で買いやがる。
奴ら、どうかしてるゼっ・・・」
という理屈になるわけですね。
ディーラーの下取りがそんなことを・・・だったら買取専門店はどうなのよ??
そもそも”下取りが安い安い”という噂はどこから聞こえてくるのでしょう??
これは、車を売った人の声ではありません。
車は一度売ってしまったら、高かったのか安かったのか、調べようがもありませんからね。
ほとんどの場合、これらの情報の出どころは・・・
買取専門店や、その一括査定への誘導サイトです。
では、買取専門店は、ネットに書かれている程、相当高く買ってくれるのか?
これも答えは残念ながらノーです。
たしかに、彼らが車を、下取りより安く買う事はできません。
買取専門店が下取りよりも安ければ、だれも買取専門店を利用しなくなるからです。。
だからと言って、彼らとて、宣伝で言うように「どこよりも高く買います」
何て言って、本当に高い値段ばかりで、車を買っていたら絶対に経営が成り立ちません。
結論から言えば、
「買取専門店の買取価格は下取りよりもちょっとだけ高い」
だけで、結果的には”買取も安い”と言わざるを得ません。
なぜなら高く買える根拠はどこにもないからです。
そもそも、買取店も、転売先は下取りと同じ業者オークションなんですから。
と疑問に思うかもしれません。
実際ユーザーへの直接販売もごくごく一部やっていますが、
あれもほぼ単なる理由づけです。
実際は恐らく9割以上が業者オークションでの転売になります。
業者オークションの事も含め、この下取りや買取の仕組みは下記の記事↓で詳しく説明しています。
興味のあるかたはこちらの記事も参考にしてください。
一般の人々にはこのあたりの仕組みが全く見えていません。
だから、下取りが安い安いと言われると・・・ついつい
買取専門店にもっていくべき???
と思って、今度は有名な名のある買取店に車を持っていってしまいます。
そう思って、買取店に入ると、彼らの恰好の餌食になってしまうのです。
買取店の査定の仕方とは?
買取店にとって、もっとも大切にしているお客さんがいます。
それが
「ディーラーで下取りをした直後に、飛び込んでくる客」
なのです。
このような極上のお客さんに対し、どのような査定をするのでしょうか?
まず買取店は、ディーラーの査定金額を、イエローブックを確認して、予想するわけです。
そして、自分達は2万円とか3万円という値段をつけてやるわけです。
ちなみに、査定をされた方は、最終的な転売価格の40万円という価格は全く見えていないわけです。
だから、下取りで1万円の車が、2万とか3万とか言われると
「やはり、そのあたりが限界か・・・」と思いますよね。
間違っても、ディーラーで1万円の車に、買取店が30万円というような値段をつけるはずがありません。
査定される側からすれば、こんなに上がると逆にパニックになるからです。
こうなると、このお客さんは逆に車を売ってくれなくなります。
なぜなら、値段の限界が見えるまで、他店舗を回り、相見積もりを取りまくることになるからです。
一発でその場で仕留めるためには、ディーラーの出した下取り金額より、ちょっとだけ高い金額をつける事で、お客さんが納得してくれるわけですよ。
これが下取りや・買取の仕組みなのです。
ディーラーが下取りで儲けの利幅を広く取ってくれるからこそ、
買取専門店というビジネスも同時に成り立つことができるのです。
だからこそ、日本中に
これだけ多くの大手フランチャイズ買取専門店がひしめいていても、
どのフランチャイズも生き延びることができているのです。
なぜ適正であるはずのイエローブックを使うとディーラーは儲けてしまうのか?
そもそも、ディーラーの下取りや、買取の儲けの元となる、
イエローブックの基準価格と、転売先となる業者オークションの売り値のギャップはなぜ生まれるのでしょうか?
二つの要因が考えられます。
一つ目の要因
一つめの理由は
輸出業者の取り扱いによるギャップです。
イエローブックの前書きには
イエローブックに掲載の卸売り価格・・・未整備状態の中古車で自動車販売業者間の平均的取引価格です。
参照:YELLOW BOOK (中古車価格ガイドブック) 一般財団法人日本自動車査定協会 発行
と記載されています。
ここで言う”自動車販売業者間”には輸出業者が含まれていないのです。
そのため、上記のカローラの事例のように、
海外で人気のある車種においては、下取りした金額と、業者のオークションの売り値に大きなギャップが生じます。
しかも、今や、中古車の全流通台数のうち、約1/3を輸出が占めている現状がありますので、とても無視できるようなシェアではないのですが、無視をせざるを得ない理由もあります。
それについては、要因の2つ目にも絡むので、後程説明します。
さて、これが一つ目の大きな要因でした。
二つの目の大きな要因
もし一つ目の要因だけならば、輸出されない車では、ディーラーも買取店もオークションに転売するだけでは、さほど利益が出ないことになってしまいます。
しかし、実際は、イエローブックの値は総じて、業者オークションの相場よりもかなり安めの設定となっています。
そうでなければ、ディーラーはまだしも、買取店がここまで増えている現状には説明がつきません。
そして、これこそが、本記事の最大のテーマとなります。
そもそも、ディーラーは、なにもイエローブックに忠実に従う義務はありません。
例えば、新車販売のために、
競合するディーラーに対し、
「うちは下取りで頑張りますから、うちで新車買ってください」
というセールストークはかなり使えると思います。
でも、その手をディーラーはほとんど使いません。
というよりも、それはしてはいけないのです。
これは、イエローブックについても同じ事が言えます。
そこには、世界No.1の自動車製造国である”日本”ならでは事情があるのです。
ディーラーが下取りを高く取れない本当の理由とは?
下取りや、イエローブックの基準値を低く抑えなければいけない理由はすべて
”新車をできるだけ多く販売しなければならない”という目的があるのです。
自動車の製造は、日本の基幹産業であり、
各電機メーカーが、海外競争力を低下させる中で、
唯一、海外においても強い競争力を誇る、
いわば、日本代表の産業ですよね??
今や、国内自動車メーカーの主な利益は、海外での新車販売と言えますが、
とは言え、おひざ元である日本国内の新車販売台数が、落ち込んでいけば、
そのニュースはやがて海外の新車販売にも飛び火し、悪影響を与えかねません。
仮に、日本の大手自動車メーカーのどれかが経営破たんしようものなら、
日本経済にどれほどの悪影響が及ぶか想像もつきません。
しなしながら、昨今、日本国内は、少子化や若者の車離れの減少により、新車販売も苦戦が強いられています。
現在の国内における新車販売台数を維持するには、
少ないパイである新車ユーザーに
「いかに、早いスパンで乗り換えをしてもらうか?」
という事がカギになるわけです。これは、日本政府にとっても重要な経済政策となるでしょう。
(エコカー減税等の制作も、ハイブリッドへの乗り換えを促進するための政策ですね)
そして、この「早いスパンでの乗り換え」
を促進する上で、
「下取りの価格が年を追うごとにどんどん安くなっていく」
という事が、非常に重要な役割を果たすのです。
これについては、下記記事で詳しく説明していますので、こちらもお読みください。
シンプルに言えば、
もし仮に「下取り価格があまり落ちない」と→ 「だらだらと今の車に乗り続けられる」
逆に 「下取り価格が年々下がる」と→ 「高いうちに売って、新車に乗り換えた方が得」
という事になるのです。
そのため、官民一体となって、下取り相場を理想の展開で下げていくために作られた基準が
「イエローブック」というガイドブックである。 と言えるでしょう。
しかし、新車メーカー(ディーラー)や、国の思惑をよそに、
実際の中古車市場は、需要と供給の関係で、相場が形成されます。
今日では、中古車の全流通の9割が業者オークションを経由するため、
業者オークションの相場が、中古車の販売価格や、輸出相場まですべてにおける絶対的な基準となっています。
低く抑えようとする、イエローブックの基準に対して、市場は消費者の需要によって吊り上がる一方です。
そのため、ディーラーの下取り価格と、下取りした車を売却する際の業者オークション相場の差額は開く一方で、
ディーラーは儲けたくなくても、儲けざるを得ない状況です。
そして、そこに目を付けた買取専門店が次々とフランチャイズの店舗数を拡大している。
これが今日の下取り・買取の現状と言えるでしょう。
ちなみに、要因1の最後に、イエローブックが輸出相場を無視せざるを得ない状況と書きましたが、
中古車輸出の相場は、新車メーカーと国の嫌がる最たるものと言っていいでしょう。
海外の需要は、日本人にとっては、理解しがたいものがあります。暴走ともいえるかもしれません。
そんな彼らの需要によっても動かされている、現実の相場を下取りに反映してしまうと、新車メーカーや国の思惑がカンプなきまでに破壊され、崩壊してしまいます。
そのため、新車メーカーは中古車輸出業者を相当毛嫌いしているのも事実です。
(以下少し余談です)私は中古車の輸出業者ですが、この仕事を始めた当初、右も左も、何もわからず、仕入れのために、トヨタ系列の中古車販売店を尋ねたことがあります。
「輸出業者なのですが・・・トヨタの○○を探していて・・・」 と店員に話すと
店員の表情が凍り付き、
「申し訳ないですが、お引き取りください。また、今後一切、この敷地内に立ち入らないでください。」
と言われた事があります。
この当時は、これが非常にショックで・・・何が起こったのか全く理解ができませんでした。
今となっては、その裏事情がよ~くわかり、すっきりしました。
下取りもだめ、買取も怪しい・・・じゃあネット一括査定は?
このような、下取り・買取事情が、今やインターネット上で少しずつ明らかにもなってきています。
そこでネット上で進められているのが一括査定です。
一括査定業者が間に入り、車を売りたい人の情報を買取業者に一斉に送信します。
買取業者同志が、競り合う事で、車の値段が吊り上がるという仕組みですね。
下取り一本で売ってしまったり、買取店にいきなり持っていくよりは、実際それなりにいい値段で売れるかもしれません。
一括査定は、ネットの誘導サイトの記事を読むと、非常に合理的で、ついつい登録したくなるような仕組みと思ってしまいますが、
気軽に登録すると大変な目に遭わされてしまいます。
そもそも、それらの記事を書いている人達は、一括査定サイトにユーザーを誘導することでお金を得ている人達ですから、ウソでもなんでも、いい事ばかり書いて、誘導しさえすれば、お金がもらえるわけです。
悪い事を書くはずがありませんよね。
もし、一括査定を検討している人がいたら、下記記事は事前に読んでおくことをおすすめします。
簡単に説明すれば、一括査定も、結局は、
- 一括査定のサイト運営業者
- 一括査定サイトへの誘導記事を書いているアフィリエイター
という、営利目的の人間が
買取店の前に入っているだけで、
それらの人々が利益を得ている以上、
そのお金の出どころは、あなたの車の価値なわけです。
これが、ベストな方法であるという事はあり得ないわけです。
買取店で、車を売る事を検討しているなら、
一括査定を使わずに限界まで、買取店の買取価格を釣り上げる方法もあります。
下記記事をご参考にしてください。
輸出業者に直接売却って言う手もあるよ!
もし、あなたの車が、
ハイエースバンやカローラなんていう、ほとんどが輸出されるような車であれば、
買取店 → 業者オークション → 輸出業者 なんていう遠回りをせずに、
直接輸出業者である弊社に、査定させてください。日本全国対応可能です。
詳しくは下記リンクからどうぞ、
ハイエースや、カローラでなくとも、輸出で人気の車は他にもあります。
こちらで、海外の人気車種一覧が確認できます。
以上で「車の下取りが”適正でありながら格安になる”本当の理由とは?」の記事を終わります。最後まで、読んでいただきありがとうございました。