そもそも車の下取りとは
車を乗り換える際、それまで乗っていた車を次の車を買ったお店に、売却すること
という意味なのですが、これでは、車の下取りの本質が全く見えてきません。
本当に、車の下取りというものを理解するには、車の下取りの危険性(デメリット)と、「楽だ」「スムーズだ」っというような誰でもわかるようなメリット以外の、とてつもなく大きなメリットを知る必要があります。
本記事では、少し長くなりますが、読むだけで、数万円、場合によっては、数十万~百万円ほどの価値を生み出す程の内容の記事を書いております。
難しい部分もあるかもしれませんが、最後までお読みいただいて損の無い内容となっていますので、よろしくお付き合いくださいね。
まず日本における「車の下取り」というサービスの背景を知ろう
海外では、そもそも「車の買取」という業態はあまりありません。車を売る場合は、個人売買が主流になっています。
日本で、車の買取業者というものが生まれた背景には、このディーラーの下取りというシステムが大きく影響しています。
日本は、言わずもがなの新車大国ですね。
しかも、乗り換えのスパンが諸外国と比較してもめちゃくちゃ短いです。
なぜ早いのか?
それは、日本経済が、自動車産業を中心に繁栄したからという理由に他なりません。
今や日本経済は、自動車産業無くして成り立ちません。
日本では、新車が売れなければ、経済が成り立ちません。そのため、国策として、新車販売を促進しています。
最近では、エコカー減税などがその典型ですね。日本では異常なほどハイブリッド車が増えています。
さて、そんな自動車販売の中心にいるのは、当たり前ですが新車のディーラーですね。
国策ともいえる新車販売ですが、その台数を伸ばす上で最も障害となるものがあります。何だと思いますか?
それは、「今乗っている車の処分」という問題なのです。
日本人は、「勿体ない」という精神が根付いている国民性を持っていますね。
しかし、新車を販売する上で、今乗っている車の処分という問題は、死活問題です。
誰でも、新しい車に乗りたいのは当然ですが、「今ある車もまだまだ乗れる」となれば、買い替えはなかなか進みません。
だから今ある車を「下取りする」というシステムは、新車販売の上で画期的なシステムなのです。
ところで、下取りされた車は、その後どうなっているのかご存知ですか??
実は、車を売却する上で、一般の人がほとんど知らないのが、これなんです。
そして、これを知らないが故に、ほとんどの人は、車の売買で失敗しています。
というか失敗している事にすら、気が付いていません。
その「これ」とは一体なにか?
車業界人しか知らない「業者オークション」の存在とは?
ディーラーに下取りで引き取られた車は、その後どうなるのか?
実は、そのほとんど(90%程度)は、業者同士しか入れないオークションに出品されています。
オークションというと、ヤフオクなどと勘違いされる人が多いですが、そんなものではありません。
実際に一つの会場に、1000台から多いところでは、10000台程度の車を集めて、毎週開催している、リアルなオークションです。
日本は新車大国であるが故、この「下取り」⇒「業者オークション」 というシステムが世界で最も誠備されている国なのです。
業者オークションについては、
【業者オークション】が車の買取相場を決める絶対相場という裏話
に詳細はまとめてあります。
簡単に言えば、下取りでも、買取でもほとんどの業者に引き取られた中古車は、ここに転売されるという場所です。
「下取りでも買取専門店の買取でも、行先が同じなら、なおさら下取りでいいじゃん」
と思われるかもしれませんが、実は下取りには大きな落とし穴があります。
下取りの大きな落とし穴(デメリット)について
ここまで業者オークションという自動車の流通において、大変重要なものの存在について説明しました。
では、ディーラーの下取りは100%この業者オークションに基づいて査定されているのでしょうか?
実は一番の問題はここにあります。実はディーラーの下取りには、このオークションとは全く関係の無い別の基準が使われているのです。
これまでの説明で、新車ディーラーの下取りが、新車販売台数に物凄く大きな影響を与える事は理解してもらえたと思います。
しかし、同時に、下取りの査定金額が、業者オークションの相場に100%従ってしまうのは、都合が悪い場合もあるのです。
例えば、新車登録から10年も15年も経過し、走行距離が10万キロや15万キロにもなるような車にも、まだ十分な価値が付いていたらどうでしょうか?
「古い車でも、まだまだそれなりの金額で下取りしてくれる」
となれば、なかなか乗り換えは進まなくなるでしょう。
逆に
「車は古くなればなるほど、どんどん価値が下がっていく。あまりに古いと処分料まで請求されてしまう」
となるとどうでしょうか?
「どうせ価値が下がっていくなら、下がる前に売って、次の車に乗り換えよう」
と乗り換えを後押しすることができます。
なので、新車ディーラー(メーカー)にとっても、国にとっても、「下取りの相場」というものは非常に重要な指標になってきますよね?
これを市場の自由な価格に合わせていては、コントロールができません。
そこで、自動車業界では、一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)という協会を設立し、
この査定協会が、査定基準の目安となる中古車価格ガイドブック=通称イエローブックなる、価格基準表を作成し、業者間の取引価格の目安となる金額を提示しています。
この査定協会ですが、一般財団法人という事ですので、公益団体ではありません。
しかし、HPには
「通商産業省及び運輸省の許可を受け設立された財団法人日本自動車査定協会(平成24年4月1日から一般財団法人日本自動車査定協会)」
出典:http://www.jaai-hyogo.jp/qanda.htm
と書かれておりますので、政府の管理下に置かれた協会である事がわかります。
つまりは、このイエローブック自体が、官民一体となって、
「下取り価格はこうあるべき」
という基準で作られた指標であると言い換える事もできるのです。
実際に、このイエローブックをもとに査定された車は、
乗用車であれば、10年かつ10万km走行し車の査定基準は、ほとんどが0円になるように設定されています。
これは、まさに、新車販売をピラミッドの頂点とする日本の自動車業界の都合を最優先するような基準と言わざるを得ません。
では、実際の業者オークションの相場はどうなのか?
実は、業者オークションの結果も、このイエローブックの影響はかなり大きく、10年、10万kmでほとんど価値の無くなる車も多いです。
しかし、例えば、新車ではあまり売れなかったのに、中古車ではやたらと人気がある車。または、日本国内では全然人気が無いのに、海外ではやたらと人気のある車などの場合、イエローブックの査定金額が、著しく本来の相場とかけ離れた金額を示している場合も多々あります。
例えば、15年落ち、20万km走行の車で、日本では誰も買わないような車だと、当然イエローブックの基準では、査定額は0円となります。
しかし、海外の人気車種だと、この程度の年式、走行距離では、全く問題ない国が多いです。
場合によっては、そんな車でも業者オークションで輸出業者同士が競り合い、50万円で取引されたり、100万円になったりすることもそれほど珍しいことではありません。
もちろん、輸出業者もそれが予想できなかったわけではなく、その金額がその車の本来の相場であり、予想してるからその金額まで吊り上がるのです。
しかも、それは輸出業者でなくても、業者のオークションの相場を見れば、誰が見てもそうなる事はあらかじめ予想ができるはずなんですよ。
実際、輸出業者でもある弊社では輸出で恐ろしい程の人気を誇るハイエースバンを専門に買取しています。30万キロ走ったようなハイエースバンでも、当たり前に30万とか、40万円出して買取しています。
弊社では、実際に買い取ったハイエースの生の買取データを公開していますので、是非見てみてください。
しかし、ディーラーの下取りは、頑なに0円を貫きます。場合によっては当たり前の涼しい顔で「処分料がかかります」と言います。
理由は「イエローブックにそう書いてあるから」という理由になるわけです。
僕の親しい友人(車関係ではない一般の友人)に、この現実について話すと、
「0円で引き取って、100万円で売る?それって、ある意味詐欺じゃないの?大手のディーラーがそんな事していいの?」
と言っていました。
普通の感覚なら、そう感じても不思議じゃないですよね?
でもちょっと待ってください。
仮にあなたが、ものを買う立場だったらって考えてみましょうよ。
本来100万円ぐらい価値のある物が、処分セールか何かで、無料になっていました。それをあなたが引き取って、ヤフオクに出品したら100万円で売れました。
これって、詐欺になりますか?
全く問題ないですよね?だって、売る方が「いらない」と言って、手放しているものなんですから、詐欺になりようがありません。
しかも、車は一度手放してしまうと、二度と別の業者に査定してもらう事はできません。そのため、その車に本来は100万円の価値があったかどうかなど、確かめようがありません。
しかも、万が一それが判明したとしても、イエローブックという政府も後押ししている査定基準のガイドブックに、0円と明記されているんですから、どうしようもないですよね。
これがディーラー下取りの最大のデメリットなんです。
良くも悪くも、価格が業者オークションの相場に基づいていないんですよ。
一見すると、下取りに関しては値段交渉をしてこないので、非常にクルーンな取引に見えます。しかも、下取りの査定をする営業担当は、基本的に業者オークションの相場にアクセスできません。なので、本当にそれが相場だと思い込んでいるケースが多いです。
なので、お互いに提示された金額に何の疑いも抱かない場合が非常に多いんです。
気を付けましょうね。
下取りのメリットは?
では、下取りにメリットはあるのか?
まず、当然のメリットとして、新しい車と入れ替える場合は、非常にスムーズに入れ替えができますよね。
下取り車を運転して、ディーラーまで乗っていき、そこで新車と入れ替えればいいんですから、これほどスムーズな取引は無いでしょう。
これは言うまでもないメリットです。
車を売却するのに車買取専門店を利用する人の多くは
「ディーラー下取りは、楽だけど安い。」
というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか?
しかし、ディーラーの下取りは、時に以外なほど金額を付けてくれる時があります。
次の三つの条件にドンピシャりとハマると、どんな買取手法よりも金額高くなることもあります。
- 決算前のどうしても新車を売りたい時
- 下取り車が自社のメーカーの車の時
- 下取り車の年式が新しく、走行距離も少なく、凹み傷少なく、修復歴もない場合
ただし、上記の条件にハマッていても、このケースはある程度の交渉術が必要になります。
交渉の最大のポイントは、「車を買うそぶりを見せない事」という事になります。詳しくは、「車の下取りで最高額を狙う場合は「ジャパネットたかた方式」をとるのだ」
という記事を参考にしてみてください。